サンゴを救うヒントは、「つながり」の中に

白くなったサンゴに、元気なサンゴを触れさせる。
そんな一見ささやかな方法が、回復のきっかけになるかもしれません。
今週のWORLD Δには、生き物同士のつながりを、環境を支える働きとして調べた研究がありました。
触れることで、回復が始まる
スタンフォード大学の発表によると、研究室で白化したサンゴの断片を健康な断片に接触させたところ、藻類や栄養が移り、回復につながりました。
約1週間触れ合わせた後に離しても、回復は続いたといいます。
サンゴの中で暮らす藻類が戻り、そこで増えることが重要だったようです。
ただし、どんなサンゴ同士でもよいわけではありません。
使われたのは同じ群体に由来する、遺伝的に同一の断片です。
海にいる白化サンゴを、この方法で次々に救えると分かったわけではなく、野外でどう役立てるかはこれからの課題です。
出典:Stanford Doerr School of Sustainability
島を支える、海と陸のつながり
この「周囲との関係を見る」という視点を、島全体へ広げた研究もありました。
太平洋とインド洋の環礁28島を調べた分析では、海鳥が多く、ネズミがいない島の周囲で、サンゴ礁が堆積・成長する潜在力が高かったと報じられています。
鳥が運ぶ栄養、サンゴ礁をつくる生物、砂を支える在来植物の根。
それぞれを別々に見ると分かりにくい働きが、ひとつのつながりとして見えてきます。
ここでも、読み急がないことが大切です。
この研究は、自然を復元する前と後を直接比べたものではありません。
また、礁が成長することと、島そのものが高くなることも同じではないため、「海鳥を増やせば海面上昇を解決できる」とは言えません。
砂粒の間でも、生き物が働く
もっと小さな場所でも、生き物の働きが調べられていました。
砂粒の間で微生物にセルロースという細い繊維をつくらせる研究です。
報じられた室内試験では、この繊維が粒同士を結び付け、処理した砂の水の通りやすさは、未処理の砂のおよそ6分の1になりました。
さらさらと水が抜ける砂の性質を、微生物のつくる材料で変える。
その発想は魅力的ですが、砂漠で効果が続くのか、作物がよく育つのかまでは確かめられていません。
実験で水の動きが変わったことと、畑で使えることの間には、まだ確かめる段階が残っています。
三つの研究を読んで浮かぶのは、自然の中にある関係を、具体的に測り直すという見方です。
接触によって何が移るのか。
海と陸の間を栄養がどう巡るのか。
微生物の繊維が水の通り道をどう変えるのか。
「自然には力がある」という大きな話が、条件を確かめられる小さな問いになっています。
今週紹介されたのは、完成した環境対策ではありません。
それでも、回復や変化が起きる条件が少し具体的になったことには意味があります。
次に追いたいのは、別の個体や場所でも同じ働きが見られるか、そして長く続くかどうかです。
守りたいサンゴや島を見たとき、その周りの何まで一緒に守る必要があるのでしょう。
目に見える主役の少し外側に、まだ見落としている働きがありそうです。
今回取り上げた記事
- サンゴの直接接触で白化からの回復が1週間で始動した可能性
同じ群体に由来するサンゴの断片を接触させ、回復につながる可能性を調べた研究です。
- ネズミのいない環礁で、海鳥と結び付く礁の成長潜在力が高い
海鳥やネズミ、島の生態系とサンゴ礁の成長潜在力との関係を紹介します。
- 微生物セルロース入り砂の透水性、実験で約6分の1との測定結果
微生物の繊維が砂の水の通りやすさを変えた室内試験を取り上げます。